皆さんはデリバティブ取引をご存じですか?デリバティブ取引は金融商品の1つであり、金融商品のリスク低下だけでなく、多少リスクを背負ってでも収益を求める際に用いられます。
この記事ではデリバティブ取引とは何かを中心に、デリバティブ取引の種類やメリット・デメリットについてご紹介します。
デリバティブ取引とは何?
デリバティブ取引とはどういうものなのか、デリバティブの言葉の意味などを含め、基本的な情報をご紹介します。
デリバティブ取引の意味
デリバティブ(derivative)には派生的という意味があることから金融商品から派生して生まれた商品という意味があります。デリバティブ取引は実はかなり古い時代から存在していると言われ、古代ギリシャにはすでにデリバティブ取引があったと言われています。
当時の古代ギリシャにおいて翌年はオリーブが豊作になると見越し、オリーブを絞る機械を借りる権利を事前に購入し、目論見通り翌年豊作となったため、機械のニーズが増したことで利益につながったという話があります。
デリバティブ取引には様々な種類がありますが、共通して言えるのは将来の取引に関することを事前に決めておく取引ということです。
デリバティブ取引の種類
デリバティブ取引は大きく分けて3つ存在します。1つは先物取引、オプション取引、もう1つはスワップ取引です。ちなみに先ほどの古代ギリシャのオリーブを絞る機械の話はオプション取引に該当します。ここからは3つの取引について解説します。
先物取引
先物取引は半年後1年後などの将来において、一定の資産を特定の価格で取引するための契約を指します。一般的な先物取引の商品に「指数先物取引」があります。日経平均株価などの指数を、特定の期日に特定の価格で売買する契約を言います。
例えば、1週間後に想定される日経平均株価を見て、それよりも上昇している、もしくは下落していると想定して取引を行います。上昇していると判断すれば「買い建玉」を、下落していると判断すれば「売り建玉」を持ち、それぞれの建玉を、転売したり買い戻ししたりしていく流れです。
オプション取引
オプション取引は特定の期間において、特定の価格で資産を売買する権利が与えられる取引です。お金を出して権利を購入し、特定の期間が訪れた際に実際に購入するかどうかを決めます。
仮に想定より価格が高くなっていればオプション取引が成功したため、お得に取引が行えたことになります。しかし、想定より安くなれば権利を放棄できますが、権利購入の費用がマイナスになります。先物取引では必ず売買をしますが、オプション取引はあくまでも権利の購入なので、商品そのものの購入は特に問われません。
またオプションには大きく分けて「コールオプション」と「プットオプション」があります。
- コールオプション:資産を将来的に購入する権利を持つオプションです。価格が上昇すると予想される場合に利用されます。
- プットオプション:資産を将来的に売却する権利を持つオプションです。価格が下落すると予想される場合に利用されます。
例えば、日経平均株価が上昇すると予測する場合、コールオプションを購入します。予測通り価格が上昇した場合、低い価格で購入できる権利を行使し、利益を得ることができます。反対に、予測が外れた場合、権利の放棄が可能であり、損失を最小限に抑えることができます。
スワップ取引
スワップ取引は金利や通貨を交換する取引です。スワップ取引には金利スワップと通貨スワップがあり、金利スワップは固定金利と変動金利を交換するなど異なる金利の交換を行うのが基本的な取引です。
一方、通貨スワップは異なる通貨で金利と元本の交換を行う取引で、ドルや円の債券を購入した際に為替リスクを避けるために行われます。
金利スワップ:例えば、固定金利を支払う代わりに変動金利を受け取るような契約です。企業が将来の金利上昇リスクを回避するために用いることが多いです。
通貨スワップ:異なる通貨を交換する取引で、異なる通貨建ての金利と元本を交換します。例えば、米ドルで借入れした資金を円で調達したい場合などに用いられます。
デリバティブ取引を行うメリット
ここからはデリバティブ取引を行うメリットについてご紹介していきます。デリバティブ取引のメリットをまとめました。
リスクヘッジが行える
デリバティブ取引が行われる理由はリスク軽減のためです。株式や債券などの価格変動、金利変動などのリスクはつきものなので、そのリスクを避けるために用いられます。
例えば、今後価格が上昇することを見越して先に先物取引を行っておけば、万が一価格上昇の状況にあってもその影響を受けずに対応できます。
将来の見通しを判断しやすくなる
デリバティブ取引で示される価格は、将来の見通しを示す価格で設定されているため、めちゃくちゃな価格とは言えません。そのため、将来的におおむねこの価格になるという予測ができます。
もちろん、経済は見えざる手によって動いており、絶対にその価格になるわけではないものの、少なくとも誰しもが思っているような価格で提示されるため、透明性も一定は存在します。
レバレッジが使える
デリバティブ取引ではレバレッジが使用できるため、少ない元手・証拠金で大きな取引が行えます。例えば「日経225先物」という商品は日経平均株価の1000倍の取引単位となり、170万円を支払うことで、3000万円プラス証拠金の取引が行えます。
10円単位で動くため、1万円単位の損益が発生します。時に1日で1000円ほどの株価が動くこともある株式市場において、1000円動けばそれだけで100万円の損益が生じます。レバレッジが使えるので少ない元手で大きな勝負が行えるほか、利益も出やすくなるのです。
デリバティブ取引を行うデメリット
次にご紹介するのはデリバティブ取引を行うデメリットについてです。
予測が難しい
デリバティブ取引は将来的な価格変動を予想して価格がつけられますが、目論見が外れればその分が損失となります。
政情不安など突如として起こるハプニングには対応できないため、未曽有の災害などが生じた場合に取り返しのつかない事態になってもどうしようもないのがデリバティブ取引です。
レバレッジによる損失
デリバティブ取引のメリットは少ない元手で大きな利益を得られるというところですが、その逆もあります。大きな利益を得られる一方、取り返しのつかない損失も想定できます。
証拠金を上回る損失が発生した場合にはかなりの痛手となるため、レバレッジの活用には注意が必要です。
専門的な知識が必要
デリバティブ取引は誰でもできるものではありません。複雑な金融商品なので、専門的な知識がなければ痛い目を見る可能性が高いと言えます。
過去に多くの企業がデリバティブ取引に挑戦し、致命的な失敗を経験し、経営陣が辞任する事態になった会社もあります。魅力的な取引なだけに代償もそれだけ大きいと言えるため、専門的な知識は必須です。
デリバティブ取引のリスク管理手法
デリバティブ取引は、価格変動リスクや金利リスクを軽減するために利用されることが多いですが、取引にはリスクが伴います。そのため、適切なリスク管理が必要です。デリバティブ取引における主要なリスク管理手法を以下に紹介します。
ヘッジ会計
デリバティブ取引を利用する主な目的の一つが「リスクヘッジ」です。リスクヘッジを行う場合、会計上の処理として「ヘッジ会計」を適用することができます。ヘッジ会計では、ヘッジ対象の資産や負債の損益と、デリバティブ取引の損益を組み合わせて財務諸表に反映します。
ヘッジ会計には以下の2つの方法があります。
- 繰延ヘッジ:ヘッジの効果が終了するまでの間、デリバティブ取引による損益を繰り延べる方法です。
- 時価ヘッジ:デリバティブ取引の損益を、リスクヘッジの終了時における市場価格に基づいて算出し、財務諸表に反映します。
Value at Risk (VaR)
Value at Risk(VaR)は、一定期間内に発生する可能性のある損失額を計算するリスク測定ツールです。デリバティブ取引のポートフォリオで、どの程度の損失リスクが存在するかを定量的に把握できるため、多くの金融機関で用いられています。
VaRの計算方法には主に次の3つの手法があります。
- ヒストリカル法:過去の市場データを用いて、リスクの推定を行う方法です。
- モンテカルロ・シミュレーション:価格変動のランダムシミュレーションを通じて、リスクの計算を行う方法です。
- 分散・共分散法:リターンの標準偏差と相関係数に基づいて、リスクの予測を行う方法です。
ストップロス注文
デリバティブ取引で大きな損失を回避するための手段として「ストップロス注文」があります。これは、予め設定した損失幅に達した場合、ポジションを自動的に決済する注文です。取引における予期せぬ価格変動が起こった際、事前に設定した価格で損失を確定させることで、リスクを制限できます。
証拠金の管理
デリバティブ取引では、証拠金を使ってレバレッジをかけることが一般的ですが、証拠金の管理が重要です。取引所やブローカーは、取引に必要な証拠金の額を設定しており、証拠金維持率が不足すると「マージンコール」が発生します。この場合、追加の資金を入れるか、ポジションを決済する必要があります。証拠金の管理によって、過度なリスクを避けることが可能です。
ポートフォリオの分散
リスク管理の基本的な方法として、ポートフォリオを分散させることも効果的です。デリバティブ取引でも、異なる資産や異なるタイプのデリバティブ商品を組み合わせることで、特定のリスクに集中しないようにします。これにより、一部の取引で損失が出ても、他の取引で補うことが可能です。
デリバティブ取引を行う際の会計処理の方法
デリバティブ取引を行う際には会計処理も必要です。ここでは会計処理の方法についてご紹介します。
公正価値の評価
デリバティブ取引において評価に用いられるのは公正価値です。公正価値は取引時点での市場価格などで出されます。そのため、デリバティブ取引を行う際には必要に応じて公正価値の再評価が必要です。
デリバティブの公正価値が変動することで、この変動した数値をもとに損益計算書に反映させなければなりません。変動した場合には損益計算書における「その他の利益または損失」で計上することになります。
ヘッジ会計の活用
デリバティブ取引をリスクヘッジで用いる場合にはヘッジ会計を使います。ヘッジ会計とはリスクヘッジ対象の資産とリスクヘッジの手段で生じた損益をまとめ、財務諸表に反映させていきます。
ヘッジ会計には繰延ヘッジと時価ヘッジがあり、繰延ヘッジはヘッジ終了まで繰り延べるもので、時価ヘッジはリスクヘッジによって損益が発生した時点に合わせて損益を算出するものです。
デリバティブ取引と先物取引との違い
デリバティブ取引と先物取引は似て非なるものと考えている方もいますが、これまでの説明の通り、先物取引はデリバティブ取引の中の1つであり、いわばデリバティブ取引の種類にカテゴライズできます。
デリバティブ取引にはオプション取引などもあるので、先物取引だけがデリバティブ取引とは言えません。先物取引は個人の資産運用がそこまで一般的ではなかった時代から存在するため、ここ30年ほどで一般的になってきたデリバティブ取引とは異なるという印象を持つ方が増えていると言えるでしょう。
デリバティブ取引で失敗するケース
デリバティブ取引で失敗するケースの実例を見ていくと、デリバティブ取引の知識がない人間が経営陣の中にいて、一時的にリスクヘッジに成功したために、巨額のデリバティブ取引を行って巨額の損失を出してしまうというケースが過去にありました。
この失敗のケースでは与信枠を大きく超えて経営陣の1人が暴走する形でデリバティブ取引を強行し、他の経営陣が知る時には巨額の損失になっていたということがあります。この会社は今でこそデリバティブ取引での失敗を完全に払拭し、デリバティブ取引で痛い目を見たイメージも世間にありませんが、その影響は少し前まであり、大変な状況が続きました。
またある企業は利益が下がってきたために、金融機関の誘いに乗っかる形でデリバティブ取引に手を出したところ、為替デリバティブで痛い目を見て結果的に倒産したというケースもあります。そのケースは円高の影響が出てしまい、倒産に追い込まれたため、今の円安の状況だったら逆の結果が出ていたと言えます。
デリバティブ取引は一種のギャンブルであり、勝ち負けがはっきりと出るものと言えます。ルーレットで赤か黒かを当てるようなものと言えなくもなく、少なくとも堅実なギャンブルとは言えません。オールインをして赤か黒かを当てるような行為になってしまっており、結果的に致命的な損失を被る企業が出てくるのはそのためです。
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まとめ
デリバティブ取引は常識的な範囲内で行えばプラスに働くことも多い取引手法の1つですが、大勝負にも出やすいため、一発逆転のための取引に用いられます。企業の場合は本業の低迷を払拭するために勝負に出るケースもあり、うまくいくところであれば本業の赤字を打ち消すだけの効果も期待できます。
一方で失敗に終わるケースも多く、本業の存続すら危うくなるケースもあるので、デリバティブ取引で本業の低迷を打破しようとする企業について注意深く観察する必要があるでしょう。