近年、資産運用を始める際に「インカムゲイン投資」と「キャピタルゲイン投資」という言葉を耳にする機会が増えています。資産形成に取り組む投資家の間で、この2つの収益スタイルを意識する動きが広がっています。しかし、「どちらが自分に合っているのか分からない」「違いがよく理解できない」という声も少なくありません。
なぜインカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資は注目されるのでしょうか。本記事では両者の基本的な仕組みや特徴を比較し、それぞれのメリット・デメリット、向いている人のタイプについてわかりやすく専門的に解説します。
インカムゲイン投資とは?基本の考え方をわかりやすく解説
配当や利息などの定期収入を得る投資スタイル
インカムゲイン投資とは、資産を売却せずに保有し続けることで、株式の配当金や債券の利息などの継続的な利益(インカムゲイン)を得ることを目指す投資手法です。資産の価格変動による売却益ではなく、保有期間中に定期的に得られる収益を積み重ねていく点が特徴であり、安定したキャッシュフローを生み出します。
毎月や半年ごとの利息・配当の受取を目的に長期保有を前提とするため、市場価格の短期的な変動に左右されにくく、比較的安心感のある運用が可能です。なお、値上がり益を狙わない分、ゆったり長期に資産形成を目指す運用スタイルとも言えます。
家賃収入や債券利息など、具体的なインカムゲインの代表例
インカムゲインの具体例としては、株式の配当金、債券のクーポン(利息)、銀行預金の利息、不動産の家賃収入などが挙げられます。例えば、株式投資では保有株数に応じて企業から支払われる配当金がインカムゲインに該当し、不動産投資であれば毎月支払われる賃料収入がそれにあたります。なお、配当金は通常年1~2回、債券の利息は年数回、家賃収入は毎月など、資産の種類によってインカムゲインの受取頻度や利回りは異なります。
いずれも資産を保有している間に継続して受け取れる収益であり、その積み重ねが投資リターンとなっていきます。
キャピタルゲイン投資とは?仕組みと特徴を理解しよう
資産を売却して利益を得る投資方法
キャピタルゲイン投資とは、保有資産を売却することで購入時との差額利益(売却益)を得ることを目的とした投資方法です。例えば、株式を1株2,000円で購入し、後に2,500円で売却すれば、1株あたり500円のキャピタルゲイン(売却益)を得られます。
なお、売却しない限り価格上昇による利益は含み益(未実現利益)にとどまり、資産を売却して初めて実現益として確定する点にも留意が必要です。
株式や不動産の値上がり益がキャピタルゲインの代表例
キャピタルゲインの代表的な例としては、株式を買ったときより高い株価で売却して得られる売買差益や、不動産を購入価格より高値で売却して得る譲渡益が挙げられます。
例えば、購入した土地や株式の価格が値上がりし、購入時より高い価格で売却できれば、その値上がり分がキャピタルゲイン(譲渡益)になります。また、都心のマンションを5,000万円で購入し、数年後に6,000万円で売却できれば、その差額1,000万円がキャピタルゲインとなります。好調な不動産市況ではこのようにまとまった売却益を得ることも可能です。
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資の違いを比較
得られる収益の種類に違いがある
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資では、得られる利益の種類に大きな違いがあります。インカムゲインは資産保有中に定期的に受け取る利息や配当金などの収益で、キャピタルゲインは資産売却時に得られる一時的な利益です。
継続的に小さな収益を積み重ねるのがインカムゲインであるのに対し、一度の売却で大きな利益を狙えるのがキャピタルゲインという違いもあります。例えば、株式では保有中に受け取る配当金がインカムゲイン、売却して得る差益がキャピタルゲインに該当します。明確な違いと言えるでしょう。
必要な投資額や運用スタイルに違いがある
インカムゲイン狙いの運用は長期保有でコツコツと収入を得る受動的なスタイルであり、日々の価格変動を逐一チェックする必要は比較的少ない傾向があります。これに対し、キャピタルゲイン狙いの運用は短期的な価格変動を捉えて資産を売買する能動的なスタイルとなり、市場を頻繁に監視して適切な売却タイミングを図る必要があります。
また、インカムゲインは投資額が少なければ受取額も小さいため、十分な定期収入を得るにはまとまった元本が必要になる一方、キャピタルゲインは少額からでも値上がり次第で大きな利益を狙えるという違いもあります。例えば、100万円を年利3%で運用しても年間の利息収入は約3万円程度ですが、同じ100万円を成長株に投資して株価が2倍になれば約100万円の売却益が得られます。
税金の取り扱いに違いがある
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資では、利益に対する課税の仕組みに違いがあります。株式や債券を売却して得るキャピタルゲイン(譲渡益)は「譲渡所得」として扱われ、申告分離課税の対象となります。税率は所得税15%、住民税5%、復興特別所得税0.315%を合計した約20.315%です。
一方、株式の配当金や債券の利子といったインカムゲインも同じく約20.315%の課税対象となります。ただし、源泉徴収ありの特定口座を利用すれば確定申告をしなくても税金が自動的に処理されます。
さらに、課税のタイミングにも違いがあります。キャピタルゲインは資産を売却して利益が確定した時に課税されるのに対し、インカムゲインは配当や利息を受け取るたびに課税が行われます。
インカムゲイン投資のメリットとデメリット
定期的な収入が得られる安心感がある
インカムゲイン投資の大きなメリットは、資産を保有しているだけで定期的な収入が得られるという安心感にあります。株価など市場の短期的な値動きに左右されず、配当金や利息という形で安定した利益を継続的に受け取れる点が魅力です。毎月あるいは年数回の収益見込みが立てやすいため将来の資金計画も立てやすく、精神的な余裕を持って資産運用を続けられるでしょう。
また、配当金や利息を再投資すれば複利効果によって資産を効率的に増やせますし、元本が増えればさらに受け取れる収入も増える好循環が生まれます。市場低迷期にも一定の収入が得られるため、精神的な安定にもつながります。例えば、配当収入を生活費の一部に充てながら資産そのものは売却せずに済むため、資産を取り崩さずに運用を継続できる安心感があります。
利回りが低く、資産の成長スピードは遅い可能性がある
インカムゲイン投資のデメリットとして、利回り(リターン水準)が低めで資産が増えるスピードが緩やかな点が挙げられます。株式の配当利回りは一般に数%程度で高いリターンは望みにくく、例えば東証一部上場企業の平均配当利回りは 年度によって異なりますが、最近の統計では約1.8~2.1%程度です(例:2019年〜2023年の推移)。
72の法則を使うと、利回りで72を割ることで元本が倍になるまでのおおよその年数がわかります。たとえば利回りが3%であれば、72÷3で約24年かかる計算です(あくまで目安の数値であり、実際の運用結果は市況などによって変動します)。そのため、小さな元手から短期間で資産を大きく増やすことは難しく、長期的な運用が前提となります。
また、企業業績の悪化などにより配当金が減配・停止される可能性もあり、期待した定期収入が得られなくなるリスクもあります。
キャピタルゲイン投資のメリットとデメリット
値上がり益によって短期間で大きな利益を狙える
キャピタルゲイン投資のメリットは、資産価値の上昇によって短期間で大きな利益を得られる可能性がある点です。市場環境や投資対象によっては、1年で株価が数倍に跳ね上がるようなケースもあり、その場合はインカムゲインでは得られないまとまったリターンを享受できます。
比較的短期間で資金を倍増させたい場合には、キャピタルゲインを狙う資産運用が有効と言えるでしょう。実際、バブル期(1980年代末)の東京都心地価は数年で2〜3倍に上昇した例があり、タイミング良く投資できれば元本を数倍に増やすことも夢ではありません。このように大きな利益を得られる可能性があるため、短期間で資産を増やしたい人にとって大きな魅力となります。
相場変動リスクが大きく、損失の可能性もある
一方、キャピタルゲイン投資には相場変動リスクが大きいというデメリットがあります。狙い通りに資産価格が上昇しなければ利益は得られないばかりか、急落すれば大きな損失を被る可能性も否定できません。特にリーマンショック時など経済危機の局面では株価が一気に下落し、資産価値が大幅に目減りすることもありました。
また、売却のタイミング判断に悩み、値上がり益を狙っているうちに価格が下落してチャンスを逃してしまうリスクもあります。極端な場合、購入時より大幅に値下がりしてキャピタルロス(値下がり損)を被り、元本割れとなる可能性も否めません。
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資|それぞれに向いている人の特徴
安定した収入を得たい人はインカムゲイン投資が向いている
安定した収入を得たい人には、インカムゲイン投資が適しています。日々の価格変動に一喜一憂せず、長期的に資産を運用しながら定期的なリターンを得ていきたいと考えるタイプの投資家に向いたスタイルです。
例えば、本業が忙しく市場を常時チェックできない会社員や、公的年金以外に毎月の副収入を確保したいシニア層などは、値動きに左右されにくいインカムゲイン重視の運用によって安心感を得られるでしょう。値動きによる資産変動のストレスをあまり感じたくない人にとっても、定期収入が得られるインカムゲイン投資は精神的な安心感があります。
値上がり益で大きな利益を狙いたい人はキャピタルゲイン投資が向いている
短期間で大きな利益を狙いたい人や、資産価値の値上がりによるリターンに魅力を感じる人にはキャピタルゲイン投資が向いています。市場の動きを頻繁にチェックでき、一定のリスクを許容してでも高リターンを追求したい人に適した運用スタイルと言えるでしょう。
例えば、少額からでも短期で資金を倍増させたいと考える若い投資家などは、キャピタルゲイン重視の運用に強い魅力を感じるでしょう。
投資経験やリスク許容度によって向き不向きが変わる
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資のどちらが向いているかは、その人の投資経験やリスク許容度によって異なります。
初心者やリスクをあまり取りたくない人にとっては、価格変動の小さいインカムゲイン中心の運用が無理なく始めやすいでしょう。逆に相場経験が豊富で値動きを分析できる人や、大きな利益の可能性のためなら一定の損失リスクを許容できる人は、キャピタルゲイン狙いの積極的な運用にも適応しやすい傾向があります。
自分のリスク許容度と運用目的に応じて、インカムゲインとキャピタルゲインのバランスを取ることが大切です。極端にどちらか一方に偏らず、自身の投資目的と許容リスクに照らして無理のない戦略を選ぶことが重要になります。
投資リスクを抑えるために大切な「分散投資」の考え方
複数の資産に分けて投資することでリスクを軽減できる
投資リスクを抑えるには、「卵を一つのかごに盛るな(Don’t put all eggs in one basket)」ということわざが示すように、資産を分散することが重要です。性質や値動きの異なる複数の資産に資金を振り分けて投資を行えば、ある資産の損失を他の資産の利益で補える可能性が高まり、全体としてリスクを低減させる効果が期待できます。
要するに、様々な資産に分散投資を行うことで一つの投資失敗で資産全体が大きく目減りするのを防ぎ、長期的に安定した運用成果を狙えるのです。
インカムゲインとキャピタルゲインを組み合わせるのも有効
分散投資の一環として、インカムゲインとキャピタルゲインの両方を組み合わせてバランスを取った運用を行うことも有効です。例えば、全体の投資資金のうち3割を値上がり益狙いの資産に配分し、残り7割で安定したインカムゲインを得るといったポートフォリオを組む方法があります。
インカムゲインで日々の収入を確保しつつ、キャピタルゲインで資産拡大を狙うことで、短期的な資金ニーズと長期的な資産成長の両立が図れます。例えば、市場停滞期でも配当や利息収入がポートフォリオの下支えとなり、逆に低金利でインカムゲインが伸び悩む局面では株価の値上がり益が全体の利益を牽引するといった効果も期待できます。自分の年齢や資産状況に応じてこの比率は調整しつつ、安定性と収益性を兼ね備えた資産形成を目指しましょう。
少額から始める堅実投資「LENDEX」の融資型クラウドファンディング
LENDEXは、2万円という少額から始められるため、投資初心者にも取り組みやすい融資型クラウドファンディングです。想定利回りは年6~10%と、銀行預金よりも高いリターンが期待できるうえ、不動産担保ローンへの出資となるため、相場変動の影響を受けにくく安定した運用が可能です。
また、毎月の分配金があるため、継続的なインカムゲインを得られる点も魅力です。多くの案件に担保や保証が設定されており、万が一貸し倒れが発生しても、担保処分などで出資金の回収が図れます。
さらに、サービス開始以来、貸し倒れゼロの実績を誇る点も投資家にとって安心材料です。ただし、元本保証はないため、リスク分散が重要です。複数のファンドに少額ずつ分散投資することで、リスク軽減を図ることができます。
高利回りと安定運用を両立するLENDEXで、新しい資産運用を始めてみませんか?
【FAQ】インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資に関するよくある質問
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資の違いは何ですか?
両者は利益の得方に明確な違いがあります。インカムゲイン投資では資産保有中に利息や配当金といった定期収入を得ますが、一方のキャピタルゲイン投資では資産売却による差益を狙います。例えば、株式では保有中に受け取る配当金がインカムゲイン、売却して得る差益がキャピタルゲインに該当します。
初心者はインカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資のどちらから始めるべきですか?
投資初心者にはインカムゲイン投資から始めることが勧められます。株価などの値動きが比較的穏やかで定期収入が得られるため、リスクが低く経験を積みやすいからです。まずは配当金が出る株式に少額投資して運用に慣れ、慣れてきたらキャピタルゲイン狙いの投資に段階的に挑戦すると良いでしょう。
分散投資をするなら、インカムゲインとキャピタルゲインはどう組み合わせればいいですか?
インカムゲイン資産とキャピタルゲイン資産をバランス良く組み合わせることが大切です。債券や高配当株など安定収入源を基軸にしつつ、一部を成長株など値上がり益狙いの資産に配分すると良いでしょう。例えばインカムゲイン重視を7割、キャピタルゲイン重視を3割程度にするなど、自身のリスク許容度に合わせた配分を心がけましょう。
まとめ|インカムゲイン投資を理解して資産形成に活かそう
インカムゲイン投資とキャピタルゲイン投資の特徴を正しく理解することで、自分に合った資産形成戦略を立てることができます。例えば、株式の平均配当利回りは約2%程度ですが、長期で継続的に積み重ねれば複利効果によって資産を着実に増やすことが可能です。
安定収入と値上がり益をバランス良く活用し、無理のない範囲で賢く投資を続けていきましょう。
参考元
東京証券取引所「平均配当金、有配会社平均利回り統計」
金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」
国税庁「株式等の譲渡所得等の課税関係」
総務省統計局「家計調査」
日本銀行「資金循環統計」
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)「分散投資とリスク管理」
国土交通省「地価公示・地価動向」
金融庁「金融リテラシー調査」