株式投資を行う中で、私たちがチェックすべきものにバランスシートがあります。別名「貸借対照表」と呼ばれ、企業の経営状況や財務体質などがわかるものです。バランスシートとは何かを分かっておくだけで、より適切な投資が行えるようになるでしょう。
この記事ではバランスシートとは何かについて、バランスシートの意味や損益計算書との違いなどをまとめています。
バランスシートとは?
バランスシートは貸借対照表と呼ばれていますが、なぜバランスシートと呼ばれるのか、その意味などをまとめました。
バランスシートの意味
貸借対照表は英語で「Balance Sheets」と呼びます。別名「B/S」とも呼ばれ、企業の資産、資本、負債がわかります。バランスシートは2つに分割されており、左側が「資産」、右側が「負債」と「資本」に分けられています。資産と負債&資本は必ず釣り合うようになっており、これがバランスシートと呼ばれる理由です。
バランスシートで何が分かるのか
バランスシートをチェックすることが投資家にとってどのような情報を理解することにつながるのか、バランスシートから読み取れることをまとめました。
自己資本比率が分かる
会社の状況がどのような状態にあるのか、端的に示す数値に「自己資本比率」があります。自己資本比率は総資産の中で自己資本がどれくらいの割合を示しているかを示すものです。この自己資本比率が高ければ、安定した経営が行われていると言われます。
おおむね30%が1つのラインとなりますが、上場企業などは50%を上回っているところも珍しくありません。自己資本比率は純資産と総資産さえわかればすぐに出せるため、バランスシートに書かれていることで算出できます。
流動比率が分かる
流動比率は流動負債をすぐに支払えるかどうかを示す数値です。流動負債とは1年以内に支払わないといけない負債を中心としたもので、買掛金なども含まれます。支払いの際には現金などを用いるため、要するに現金で支払える資産はどれくらいあるのかを示す比率です。
流動比率の理想は200%とされていますが、最低でも100%は確保し、150%まで行ければ簡単に危機を迎えることはないとされています。流動比率は流動資産と流動負債の数値さえわかれば出るので、こちらもバランスシートの確認を行えばすぐに出るでしょう。
負債の状況が分かる
負債は会社にとっていずれ返済しなければならないものであり、先ほどご紹介した流動負債もこの中に入ります。また社債などは固定負債に入り、1年後以降に返済するものではありますが、借金的な要素を持つことにかわりはありません。
先ほどの流動比率、そして当座比率など支払い、金回り系の指標をチェックする際に負債の存在は重要な意味を持ちます。流動負債が多い企業なのか、それとも固定負債が多い企業なのかで、同じ負債でも意味合いが異なることから確認すべきポイントです。
バランスシートの作り方
バランスシートを作る際には資産、資本、負債の3つが欠かせません。ここからバランスシートを作る際のルールなどをご紹介し、作り方をまとめます。
資産
資産には3種類あり、「流動資産」、「固定資産」、「繰越資産」の3つがあります。これをバラバラに記載するのはよくありません。記載には順番があり、現金化しやすいものから並べるのが原則となっています。このルールから一番上に記載すべきものは流動資産、次に固定資産、最後が繰越資産です。
繰越資産がラストになったのは、繰越資産の性質にあります。繰越資産は既に支払ったものが何年も影響を及ぼすため、資産として計上する必要があることから存在します。現金化とは一線を画したものであり、結果的に最後に記載することになります。
この原則のもと、資産を上から書いていけばこれでバランスシートの左側は埋まるのです。数値の大きいものから並べると勘違いしている方もいますが、現金に最も近いものから並べるイメージでいいでしょう。
負債と資産
バランスシートの右側には負債と資本が入りますが、右側の上部に入るのが負債です。負債は流動負債と固定資産の2つですが、こちらのルールは返済時期が早いものを上部から入れていきます。そのため、流動負債の次に固定負債という流れになります。
バランスシートの右側の下部に入るのが資産です。資本金や資本剰余金、利益剰余金などが該当します。
大まかな作成の流れ
貸借対照表の大まかな流れは、取引が発生したら勘定科目を決めて「仕訳帳」に記帳、借方もしくは貸方に振り分けてから「総勘定元帳」に転記します。この「総勘定元帳」を見ながらまず試算表を作成し、資産、資本、負債に分けていき、決算整理仕訳を作ってから貸借対照表に体裁を整えます。
これらを手作業で行うのは会計を担当する人からすればとんでもない労力を必要とするため、会計ソフトで行っていくことから、入力していく中で自然と体裁が整うような形になるでしょう。
バランスシートと損益計算書との違い
バランスシートとは別に損益計算書が存在します。損益計算書もまた重要な意味を持つものですが、損益計算書との違いなどをまとめました。
そもそも損益計算書とは何か
損益計算書は「Profit and Loss Statement」、別名「P/L」とも呼ばれ、企業のおおよその利益などが分かります。確定申告を行う人の中で青色申告を行っている方も損益計算書を作らなければならず、人によってはなじみ深いものです。
損益計算書は「経常損益の部」と「特別損益の部」があり、経常利益の部では営業損益と営業外損益を記載し、先に収入、次に支出という具合に書いていきます。収益→支出という形で書いていき、経常利益な
損益計算書はどれだけ収益を出しているのか、どれくらいの成長を見せているのかを見るのに必要な指標となります。利益にも経常利益と特別利益があり、同じ利益でも普段の営業活動によって出された利益なのか、それとも突発的な利益なのかが一目瞭然です。これは費用に関しても同じことが言えます。
また粗利率とも呼ばれる「売上高総利益率」が損益計算書から確認でき、売上高総利益率が高いと利益を出しやすい状況にあると判断できます。バランスシートは企業の財務体質の状況が分かりますが、損益計算書に関しては収益性など稼ぎのやり方や質などが分かる形になっているのです。
バランスシートの見方と読み方
バランスシートをチェックする際にはどんな見方、読み方をしていけばいいのか、その方法をご紹介していきます。
棚卸資産の有無をチェック
たとえ資産が多くても現金化ができない資産はあまりアテになりません。特に棚卸資産のようになかなか現金化が難しそうなものは、結果的に資産にならない、もしくは大きく目減りさせることにもなるため、棚卸資産の有無はチェックが必要です。
スーパーマーケットなどで棚卸のために営業時間を短縮するケースがありますが、これはバランスシートを作る上で重要なことです。棚卸資産の有無を確認するために行い、場合によっては資産評価の見直しを行います。特に小売店などは棚卸資産がどれだけあるかを確認しなければなりません。
売掛金の状況をチェック
売掛金は現金化一歩手前の状態のものであり、売掛金として計上するとしても、だいたい売上1か月分ないし2か月分が1つの目安となります。ところが、様々な要因から売り上げの数か月分も売掛金が計上されるケースが存在するのです。
いわば現金化できていないものが増えていることから、1円でも多く回収しなければなりません。万が一売掛先の企業が倒産したら最悪の事態と言えます。この場合、回収できなかった分は損金として処理しなければならないのです。売掛金が多いかどうかも実は大事と言えます。
バランスシートは家庭でも実践できる
バランスシートは収入と支出、資産さえ分かればどの家庭でも作れます。つまり、バランスシートを各家庭で作ることは家庭の経営を行っていく中で重要と言えるのです。なぜバランスシートを家庭でも実践すべきかをまとめました。
おおよその資産が分かる
家庭でバランスシートを作る際には現金や普通預金、株、投資信託など資産の部分に多くの資産が入り、右側に負債が書かれていきます。住宅ローンなどが負債の中に入りますが、全体の資産から負債を差し引くと正味の資産額が明らかとなります。
ローンなどを抱え借金が多いような人でも、実際には財産が多く、借金をゼロにするために財産を売却してもどれくらいの資産が残るかが分かります。住宅ローンなどの額面ばかりを気にしがちですが、実際にはそこまで気にする必要はないと多少は気楽な気持ちで、そして、資産形成に前向きに取り組めるでしょう。
投資にいくらお金をかければいいかが分かる
バランスシートを作成することで投資にいくらくらいお金をかければいいかが分かります。これに損益計算書を加味すれば、おおよそいくらぐらいの黒字になっているかが分かるので、その中でいくらぐらい投資に回して、おおよそいくらぐらいの資産形成を目指していくかも分かってくるでしょう。
家計簿も言ってしまえば家庭における財務諸表の1つです。一方で、負債をいくらかまとめる項目は家計簿にはなく、どちらかといえば損益計算書的な性質が強いものです。だからこそ、バランスシートを作成することをおすすめします。
まとめ
今回はバランスシートについてご紹介してきました。投資先を見つける中でバランスシートを見られるようになっておきたいところです。一方、自らもバランスシートを作ってみることで、資産状況などを改めて確認できます。
実際に作ってみると、嫌な状況を直視するハメにもなりますが、何をどのようにすればいいかも明らかです。相手のことを知るためにバランスシートは必要ですが、実は自分のためにもなるので、定期的に作ることをおすすめします。