プライマリーバランスとは何か簡単にわかりやすく解説|黒字化する意味や日本の財政状況について

 

 

皆さんはプライマリーバランスをご存じですか?プライマリーバランスは日本政府の予算に関係する言葉であり、ここ20年で聞かれるようになった言葉と言えます。プライマリーバランスとはどういうものなのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

 

本記事ではプライマリーバランスとは何かを中心に、プライマリーバランスの重要性などをご紹介します。

目次

プライマリーバランスとは何か

プライマリーバランスとはどういうものなのか、ここからはプライマリーバランスの言葉の意味など基本的な情報をご紹介します。

プライマリーバランスの意味

プライマリーバランス(primary balance)は日本語で基礎的財政収支と言います。各国政府は社会保障や公共事業など様々な行政サービスを提供しています。この行政サービスの経費、いわゆる「政策的経費」について、税金などの収入「税収」などで賄えるかをチェックするのに用いられます。

 

税収だけでは政策経費を賄えない場合にはプライマリーバランスが赤字ということになります。健全な財政のためには政策的経費を税収で賄い、国債を投入しないようにするのが理想的ですが、日本はプライマリーバランスが赤字の状況です。

プライマリーバランスの重要性

プライマリーバランスはここ20年で語られるようになるなど、重要性が増しています。ここではプライマリーバランスの重要性についてご紹介します。

財政の持続可能性を高める必要がある

プライマリーバランスは政策的経費を税収で賄えるかをチェックするのに用いられるため、黒字であれば財政の持続可能性が高いと言えます。赤字だった場合、国債を投入し続けることになり、いわゆる借金が増え続ける状況です。

 

家庭であれば、浪費が激しく収入が少ない場合には消費者金融などから借金をすることになります。その借金は返済能力に応じて限度額が決まりますが、限度額を超えると別の消費者金融などでまた借りなければなりません。このように借金には限界がある状態です。

 

財政の持続可能性とは何十年も何百年も財政が持つ状態を指しており、持続可能性が高まるということはそれだけ持続しやすく、低くなればどこかで頓挫することが言えます。

国債の増加を抑える

プライマリーバランスが赤字になると、国債を投入することになります。国債はいわゆる国の借金です。プライマリーバランスが赤字で、それが当たり前のように続けば、毎年国債は増えていき、国債金利が上がるだけで金利の支払いだけで四苦八苦します。

 

近年世界各国で政策金利が上がる中、日本だけ金利が上がらない状態が続いています。これは金利を上げれば利払いが大変になるためと言われており、日本の財政は厳しい状況です。そのリスクを少しでも減らせる狙いがプライマリーバランスの均衡を目指す方向性につながっています。

国の財政政策が評価される

プライマリーバランスの動きはニュースであまり取り上げられませんが、多くの投資家はプライマリーバランスに注目しています。これは国の財政政策が妥当なものかをチェックするのに欠かせないからで、プライマリーバランスを無視するバラまき政策はあまりいいことではないという見方があるためです。

 

プライマリーバランスが赤字である以上は赤字を減らすために政策的経費を減らすか税収を上げるかしなければなりません。近年、財務省が消費税を増税するなど、税金を少しでも国民から徴収しようとするのはこうしたことも関係しているのです。

プライマリーバランスで黒字化する意味

プライマリーバランスが黒字になることはどんな意味があるのか、黒字化する意味をご紹介します。

債務の返済が進む

プライマリーバランスが黒字になることは、税収で政策的経費を賄えることを意味しており、余った部分で国債の返済につなげられます。国債を減らすことで金利の負担も少なくなり、より政策的経費にお金が回せるほか、国債の返済がより加速します。

 

プライマリーバランスを黒字にさせ、この状態を何年、何十年と続けることでより安定した財政状況となります。

国際的な信用力が上がる

プライマリーバランスを黒字にさせることで財政が健全な状態であることは明らかです。財政が健全であることは国際的な信用力を高めることにもつながります。国際的な信用力は国債を買ってもらうのに極めて重要です。

 

仮に信用されなければ、国債を引き受けてもらえません。引き受けてもらえなければいずれデフォルトと呼ばれる危機的状況につながります。そのため、信用力を上げることは金融市場での資金調達のしやすさにつながると言えます。

長期的な政策にもつながりやすい

プライマリーバランスが長く黒字の状態で推移することにより、将来のインフラ投資などに余裕が生まれやすくなります。予算編成において柔軟性が増すことで、経済政策など成長戦略にも予算が回せることは明らかです。

 

国の発展につながることに予算を割くことは当然と言えますが、債務超過の状態ではそれすらも難しくなります。成長戦略を長期間続けていくにはプライマリーバランスを黒字にさせることはもはや必須と言えるでしょう。

プライマリーバランスから見る日本の財政状況について

日本の現在のプライマリーバランスですが、残念ながら赤字が常態化しています。最近になり、2025年度における国と地方のプライマリーバランスの試算が出され、1兆円ほどの赤字になると言われています。

 

税収が上がっているために以前よりも赤字幅は小さくなったものの、それでも黒字化には至っていません。ただ2026年度には黒字化の可能性があることを示唆しています。

 

2022年度のプライマリーバランスは30兆円近い赤字だったことを思えば、1兆円のマイナスは可愛らしいものですが、近年はバラまき政策が出始めており、プライマリーバランスが試算通りになるかは微妙なところです。

 

しかも、こうした試算はGDPの伸び率が甘く設定されており、実際にその数字になるかは極めて微妙です。その点を考えると、日本の財政状況はまだまだ厳しい状況にあると言えるでしょう。

プライマリーバランスを保つために何をすればいいか

プライマリーバランスを黒字にさせるにはどのようなことをすればいいのか、具体的なやりかたをまとめました。

税制改革を行う

プライマリーバランスを黒字にさせるには税制改革を行い、税収を上げることが求められます。ただ単に増税を行えばいいものではなく、成長戦略のためにあえて減税した方がいい分野もあります。その最たる例が法人税です。法人税を下げることで外資系企業が日本に拠点を置いて、様々な雇用が創出され、税収アップにつながりやすくなります。

 

目先の税収ではなく、長期的に安定した税収を確保するための税制改革を行うことがプライマリーバランスを保つのにつながるのです。

支出の見直し

プライマリーバランスを保つには支出の見直しを行うことも大切です。よくムダをなくすための改革が政治家の口から発せられますが、ムダをなくすことは政策的経費を削り、プライマリーバランスを保つことにつながります。

 

日本では長年ムダをなくすことに力を入れてきたものの、長期的な不景気の影響もあり、歳出拡大への圧力も強まっています。支出の見直しは削るべきところを削り、厚くするところは厚くするという点でも重要です。

経済成長を促す

経済成長を促すことは税収アップにつながるため、結果的にプライマリーバランスの向上にもつながります。税収が上がればプライマリーバランスの黒字化は達成しやすく、より健全になれば政策的経費を切り詰めずに済みます。

 

成長戦略を行うことで国力も高まり、国際的な競争力もつきやすくなります。支出をできる限り削りつつ、経済成長を促す方向性で動ければプライマリーバランスの向上につなげられます。

プライマリーバランスで見る世界と日本の差

プライマリーバランスをGRP比で見ると、日本は赤字です。では世界ではどんな状況なのか、2022年のプライマリーバランスとGDP比からチェックしていきます。

上位に並ぶ意外な国たち

184の国と地域において、プライマリーバランスのGDP比がプラスなのは61カ国とさほど多くありません。トップはノルウェーで23.88%ですが、2位以降はリビアやカタール、赤道ギニアなどが続き、イラクやクウェートなどもトップ10に入っています。いずれの国も産油国が多く、原油高の恩恵を強く受けていると言えるでしょう。

 

日本は184の国と地域の中で第173位とかなり低めです。他の先進国には相当後れをとっており、プライマリーバランスの黒字化に向けては相当な試練が待っています。

プライマリーバランスは意味がないというのは本当なのか

プライマリーバランスの黒字化を目指して税収を上げようと日本政府は様々な増税を行う一方、こうした増税に反論する形で、「プライマリーバランスの黒字化を目指しても意味がない」という意見が目立っています。

 

こうした意見は確かに聞こえがいいものの、実際には意味がないと断言するのは乱暴と言わざるを得ません。プライマリーバランスは国の財政健全性を評価する上で重要な指標であり、世界的にはプライマリーバランスが重視されているからです。

 

一方で、プライマリーバランスは収入と収支のバランスを意味するため、単に削ればいい、増やせばいいというものでもありません。成長戦略を度外視して予算を削ることは全くもってナンセンスと言えます。だからこそ、意味がないと指摘する声があるのはある種当然と言えるでしょう。

まとめ

プライマリーバランスの黒字化は日本において悲願であり、小泉純一郎氏が総理大臣になってから、盛んにプライマリーバランスの黒字化が叫ばれてきました。「改革なくして成長なし」というフレーズはプライマリーバランスの黒字化に向けては重要なフレーズと言えます。

 

しかしながら、近年は歳出への圧力ばかりが強まり、プライマリーバランスの重要性は低くなりがちです。それでもプライマリーバランスの黒字化は欠かせません。将来の日本を背負う今の若者たちが絶望しない未来にするためにもプライマリーバランスの黒字化は必須と言えます。

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