皆さんはセミリタイアをご存じですか?セミリタイアはバリバリ仕事で頑張ることを辞めて多少働く程度にとどめて、空いた時間で余生を楽しんでいくというものです。FIREが登場する前から日本でも聞かれた考え方です。
今回はセミリタイアに着目し、セミリタイアとは何か、セミリタイアにいくらお金がかかるのかなどをご紹介します。
セミリタイアとは?
セミリタイアとはどういうものなのか、基本的な内容についてご紹介します。
セミリタイアの概要
セミリタイアは一定の年齢で仕事に区切りをつけ、自分の時間を作りながらも仕事はある程度頑張っていくというものです。休みなく働き続けるような働き方を辞めて、趣味の時間を作りながらも時折仕事を行う程度のスタンスがセミリタイアとなります。
完全なリタイアと違い、収入源は多少残されているのがポイントで、決して完全な引退ではないことが言えます。
セミリタイアを実践した芸能人
日本ではセミリタイアという考え方は意外にも古くから存在しています。1990年に番組の司会者として有名だった大橋巨泉さんがセミリタイアを実行しました。大橋巨泉さんは当初50歳でセミリタイアをする予定でしたが、番組でのやり取りがまだまだ面白いと感じ、セミリタイアの時期を5年延長し、56歳ですべてのレギュラーを降りました。
その後、大橋巨泉さんは気温15度を目安に、カナダやオーストラリアなどを転々とするようになり、春と秋の時期だけ日本にやってきてはテレビ番組などにゲスト出演して再び海外に行く生活を過ごしてきました。
一方でセミリタイアの考え方はあまりにも先進的すぎたのか、大橋巨泉さんに追随する方はあまり見られません。最近になってFIREの考え方が浸透し始めたこともあり、一般的になりつつありますが、56歳ですべてのレギュラーを降りるという大橋巨泉さんのやり方はなかなかできることではないでしょう。
セミリタイアに必要な資金はいくら?
ここからはセミリタイアに必要な資金についてご紹介していきます。
FIREの考え方から資金を算出
セミリタイアに必要な資金を算出するのに活用できそうなのが、FIREに必要な資金の出し方です。FIREを実現していくには、年間の支出額の25倍の資産が必要であると言われています。
例えば300万円の年間支出額であれば7,500万円が必要な資金となります。この考え方を当てはめるのであれば、年間支出額の25倍がセミリタイアに必要な資金と考えることができるでしょう。
一方でセミリタイアは正社員からパートになるようなもので、ある程度収入は残されている状況です。支出額の3分の1程度を労働で確保する場合、200万円の支出額を貯金などで工面すればいいという考え方もできます。
その場合であれば必要になるのは5,000万円となります。いずれにしてもセミリタイアは誰もができるものではありませんが、この後ご紹介するFIREの考え方を駆使すれば、より楽にセミリタイアが行える可能性も十分に考えられるでしょう。
セミリタイアとFIREの違い
ここからはセミリタイアとFIREの違いについて解説します。
仕事への取り組み方の違い
FIREは一定の資産形成を終えたら、あとは悠々自適に暮らしていくことが目的です。ですので、多くの人は仕事をせずに暮らしていくことを考えてFIREを行います。時折、FIREがうまくいかずに慌てて働きだす人がいますが、その点は本来のFIREの考え方ではありません。
一方、セミリタイアはあくまでも「セミ」とつけるだけあって、完全な引退ではありません。正社員からパートになるように、責任あるポジションから降りて自由に働けるようにしておくのが一般的です。大橋巨泉さんのようにレギュラー番組はすべて降りつつも、春や秋に帰ってきてはゲスト出演するような出方はまさにセミリタイアと言えるでしょう。
運用益の有無
FIREは運用益を活用し、FIREを維持することが大前提になります。運用することで財産の目減りを防ぐことができるのです。FIREでは4%の運用益を出し、この運用益内で生活ができれば資産の目減りは起きないと言われています。
一方、セミリタイアでは特に運用益の有無に関する条件はありません。セミリタイアなので細々と働くことは可能であり、一定の収入は確保できます。例えば、この収入を資産運用に回すもしくは生活費として活用するのも1つの考え方です。運用しなくても仕事の収入でカバーするのも1つの方法として有効でしょう。
セミリタイアに必要な年代別の貯金額
ここからは、セミリタイアに必要な年代別の貯金額についてご紹介していきます。
30代のケース
30代の場合は2,000万円ほどの貯金があればセミリタイアは可能であると言われています。理由はいくつかあり、セミリタイアをするといっても、一定の月収を得やすく、その部分で生活費の大部分をカバーできるからです。
仮に不足する可能性が高まっても、再び働きだすこともできます。また、ライフステージが変化し始める時期であり、子育てにおいてもこれからお金がかかり始める時期と言えます。子育てをしていく中で考え方に変化が生じて再び復帰するのもあるなど、色んな選択肢が浮上しやすい時期と言えます。
40代のケース
40代では30代の倍、だいたい4,000万円程度が1つの目安になります。40代の場合はライフステージにおいて何かと出費があるためで、生活費が不足した際に再び働きだすというのが難しくなり始める時期でもあります。
そのことも踏まえるとだいたい4,000万円程度あれば十分にカバーすることは可能です。より悠々自適な暮らしをしていくとなると、資産運用を積極的に行って、生活費に使いながらも資産が増えていくような形にしていくのが理想的となります。
50代以上のケース
50代以上の場合はライフステージ的に子育ても終わり、早い段階で独立してもらうなどすれば、3,000万円や4,000万円でも十分セミリタイアは可能になります。50代以上は特に労働において収入を確保していくのが難しくなってくるでしょう。
その場合に一定の金額を確保し、年金支給まで耐えしのぐようにセミリタイアを維持していくのが理想的です。年金を得るようになれば、セミリタイアはほぼ継続できるような状態になります。
セミリタイアで失敗しないための方法
セミリタイアで失敗しないためにはどんな方法があるのか、ご紹介していきます。
生活費を一定にする
セミリタイアを維持するには、無駄遣いをなくすことが第一です。皆さんの中に、なぜかお金が貯まらないという方がいるかもしれません。結局何に使ったかわからないという理由から貯まらず、何に使ったかをはっきりとさせ、一定額以上は使わないと決めればおのずと貯金ができるようになります。
セミリタイアにおいて貯金が枯渇することは最悪です。枯渇しないためには計画的に使用し続けることが大事です。決められた生活費で生活をし続けることが求められます。
確実な投資を行う
FIREでは4%の運用益を出し続けることが大切ですが、その程度の運用益を出しつつ仕事を行えば、基本的にはセミリタイアはうまくいきます。FIREではインフレ率を加味して、だいたい7%の運用ができればうまくいくとしています。
仕事を少しだけ行う場合に7%とまではいかなくても5%前後を目指していけば、十分にセミリタイアは行えるでしょう。ポートフォリオなどを考慮して資産運用を行っていき、無理のない、確実な投資を目指しましょう。
様々な余力を持つ
セミリタイアで失敗する人の多くは余力がどんどんなくなって焦りが生じ、計画が狂ってしまうケースが目立ちます。この場合の余力は経済面だけでなく、仕事面や人間関係など様々です。特に経済面は予期せぬ出費が重なり、想定外の状況になってしまうことが十分に考えられます。
先ほどご紹介した貯金額はある程度余裕のある貯金額ですが、それよりもさらに上乗せした上で一定の生活費で生活し、仕事もそれなりにこなすなどすれば、余力は相当なものです。焦りだすと視野が狭くなり、墓穴を掘ることもあるので、特に経済面の余力を残せるように準備を進めましょう。
生きがいになりそうな仕事を見つける
FIREに挑戦し実際に成功したものの、結局仕事がしたくてFIREをやめたという人が意外と多くいます。FIREを実現させた人はその後無駄遣いなどで断念するケースは少なく、仕事をしなくなって張り合いがなくなり、人生を充実させるために働きだしたという人が目立ちます。
FIREを実現させるために若いうちから必死で働いた人が多く、いざFIREを実現させたとして、仕事をしないでその日を過ごすことへの不安感が生じるようになります。不安感を打ち消すためにある程度働き、結果的にセミリタイア状態になるのです。
セミリタイア中は生きがいになりそうな仕事を見つけるのがおすすめです。仕事をしていて楽しい、夢中になれるなど、楽しく仕事をしながらお金がもらえるようなものであれば、ストレスをさほど感じずにセミリタイアを継続させることができます。
セミリタイアは貯金がなくてもできる?
セミリタイアは貯金がなくてもできるとされ、年収300万円程度でもセミリタイアをしている人がいます。ミニマリストのようにモノを買わず、住む部屋も安い部屋にして寝るだけの状態にするなど、出費を抑えれば十分暮らしていくことが可能です。
まとまった貯金がなければセミリタイアはできないわけではなく、結婚する気もなく、住む場所にこだわらないなどのケースであれば多額の貯金を確保する必要はないでしょう。無理せず細々と暮らす中で、自分が大切にしているものを守り続けていく形であれば、幸せに暮らすことは可能でしょう。
まとめ
セミリタイアを実践していた大橋巨泉さんは晩年病気などと闘いながらも悠々自適な日々を過ごしていました。大橋巨泉さんは経営なども行っており、不労所得的なものも得ており、そのこともセミリタイアを支えていたと言えます。
セミリタイアは最低限の仕事をしながら余生を過ごす1つの方法です。若いうちは必死に働き、年齢を重ねたらゆっくりと過ごす、これが理想的な人生であり、いいフェードアウトの仕方とも言えるでしょう。