インサイダー取引とは?意味や事例についてわかりやすく解説|防止策や罰則、事項などについて

 

 

皆さんはインサイダー取引をご存じですか?インサイダー取引という言葉を聞き、あまりいいことではないというイメージを持つ方がほとんどではないでしょうか。一方で、インサイダー取引とはどのようなことを指すのか、具体的に説明できない方が多いのも事実です。

 

本記事ではインサイダー取引にスポットを当て、インサイダー取引とは何か、インサイダー取引がどれほど行われているのか、なぜ禁止されているのかを解説します。

目次

インサイダー取引とは何か

インサイダー取引とはどういうものなのか、まずは基本的な情報をご紹介します。

インサイダー取引の概要

インサイダー取引は、東京証券取引所などに上場している会社関係者が、会社に属しているからこそ得られた情報(重要事実)を利用し、自分の会社の株を売買して利益につなげていく取引を指します。

 

例えば、特定の企業と合併することが翌日明らかにされる場合、公表されれば株価は大きく上がる可能性が高いです。一般の投資家は公表された時点で知ることになるため、株価が大きく上がっているタイミングで買うことになります。しかし、会社関係者は既に合併することが分かっており、株価が落ち着いた状態で購入できるのです。

 

インサイダー取引は、一般の投資家に不利が被る形になりやすい取引であり、証券市場全体の信頼にも悪影響を及ぼします。一方で、「重要事実」が公表された後であれば、売買をしても問題はありません。

インサイダー取引の意味

インサイダーは英語で「insider」と書き、内部の人・部内者・内部関係者などの意味があります。直訳すると、「内部関係者の取引」です。

 

ビジネスの世界における「インサイダー」は、会社の情報にアクセスできる人を指します。この場合の会社の情報には経営方針・経営戦略・財務状況にアクセスできる人が該当しますが、経営者や役員はもちろん、現場の職員、パートやアルバイトも対象です。他には一定割合以上の株式を持つ株主や許認可の権限を持っている公務員、上場会社と契約している公認会計士や弁護士なども会社関係者の扱いとなります。

 

これらの会社関係者から株価に影響を与える情報を見聞きした人物も規制の対象です。実は会計関係者から情報を聞いた人物がインサイダー取引の対象になるとは思わずに売買をしてしまい、捕まってしまうケースもあります。インサイダー取引は会社関係者だけが対象ではないことを知っておかなければなりません。

インサイダー取引の件数・傾向

インサイダー取引によって課徴金納付命令勧告が出されるケースは年間で20~40件ほどです。実際にインサイダー取引に手を染める人物は、会社関係者よりも会社関係者から情報を受け取った人物の方が多い傾向にあります。

 

その会社関係者も経営者・役員が関与するケースについては、実はそこまで多くなく、社員がインサイダー取引に手を染めてしまうケースが目立ちます。経営者・役員の中には株を保有する人は少なくありませんが、万が一売ってしまえば明らかにインサイダー取引を疑われてしまうため、リスクが大きすぎます。

 

一方で、多少の株であれば、偶然を装って売買を行ってもバレないとインサイダー取引をやる側は思いがちです。そのため、社員などがインサイダー取引をやってしまいますが、監視はしっかりと行われているため、額に関係なくインサイダー取引はバレやすいと言えます。

インサイダー取引は何がいけないのか

そもそもなぜインサイダー取引はやったらいけないのか、その理由をご紹介します。

公平ではないから

基本的に市場は誰にとっても公平な環境でなければなりません。もしもインサイダー取引が許された場合、重要事実を先に知った人物だけが丸儲けをし、普通の投資家は割を食い続けることになります。これでは市場に対する信頼はなくなり、積極的な取引はなされないでしょう。

 

公平で信頼される市場であり続けるために、インサイダー取引を禁止しており、フェアな状態で取引が行われるようにしないといけないのです。

インサイダー取引の罰則

インサイダー取引には大きく分けて2つの罰則があります。ここでは2つの罰則について解説します。

刑事罰

インサイダー取引が行われた場合、取引にかかわった人物は5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金、そして懲役と罰金の併科になる場合があります。また、財産の没収も行われるため、経済面での罪も強化されています。

 

この場合の財産は、売って得た金額が対象です。例えば、500万で買い付けた株が1,000万円になった場合、売った額の1,000万円が丸々没収されます。利益だけが没収されるのではなく、買い付けた代金すらも没収されるため、多額のインサイダー取引ほどそのダメージは大きいものとなるでしょう。

 

法人がインサイダー取引を行った場合は、5億円以下の罰金になります。利益を得た金額が巨額であれば億単位の罰金が科せられる可能性が高いでしょう。

課徴金

課徴金は行政処分として行われるもので、こちらは利益に相当する額を納付することになります。買付けで利益を出した場合、東京証券取引所など証券取引所のホームページに合併などの重要事実が掲載されてから2週間における株価の最高値が関係するのです。

 

先ほどのケースでは500万で買い付けた株を1,000万円で売却した形でしたが、実は重要事実が掲載されてから2週間で1,500万円まで上がった時もあったとします。1,500万円の段階が最高値だった場合、この1,500万円から買付け額の500万円を引いた額、1,000万円が課徴金となります。

 

課徴金は違反の種類によって変わり、資産運用であれば1か月分の運用対価の額の3倍、仲介関連業務は1か月分の仲介関連業務における対価の額の3倍という形で課徴金が決められる流れです。

状況次第で課徴金が増減されるケースも

時に巨額の金額となるインサイダー取引での課徴金ですが、実は状況次第では課徴金が半額になるケースがあります。誰からも指摘されることなく、自ら証券取引等監視委員会に報告を行う場合です。このケースのみ、課徴金が減額されます。

 

一方、インサイダー取引を行った人物などが、違反を犯した日から過去5年において課徴金納付の命令を出されていた場合には、課徴金が1.5倍になってしまいます。

インサイダー取引の事例

ここからは実際にあったインサイダー取引の事例について解説します。

東芝子会社の社員が犯したインサイダー取引

東芝の子会社で働いていた社員が、取引先の会社で検査の不正があったことを知りつつ、情報が開示される前に株を売却したとして、インサイダー取引であると指摘を受けました。およそ2週間にわたって、500万円以上の株を売却し、情報開示前に売り抜けていたのです。

 

事実が明らかとなり、社員は懲戒解雇処分となったせいか、刑事罰には問われなかったものの、課徴金として185万円を支払うよう勧告を受けています。

スクウェア・エニックスの社員が犯したインサイダー取引

スクウェア・エニックスの社員だった人物は、複数の会社と携帯電話で遊べるゲームを一緒に開発している事実を知りながら、この複数の会社の株を買い付けたことで罪に問われました。社員は世界的にも知られているゲーム開発者でしたが、最終的に執行猶予付きの有罪となっています。

 

罰金自体は200万円でしたが、追徴金が非常に高額で、2億円近い追徴金が課せられています。それだけインサイダー取引によって巨額の利益を出していたことがうかがえる事件です。

インサイダー取引の防止策

最後に、インサイダー取引の防止策についてまとめていきます。

インサイダー取引関連のルールを周知徹底する

インサイダー取引は、重要事実を見聞きした第三者も該当するため、いい話を聞いたとばかりに取引を行ったら、その時点でインサイダー取引に手を染めたことになります。事実が発覚した瞬間、会社を懲戒解雇になる可能性も考えられ、人生を棒に振ることもあるでしょう。

 

反対に、重要事実を第三者に話すことは、インサイダー取引を生み出す元凶になることも事実です。例えば、居酒屋で友人などについつい気が大きくなって話してしまったり、家族に開発状況を打ち明けたりすることは、インサイダー取引を誘発しかねません。インサイダー取引に関連するルールを事前に知っていれば、少なくとも第三者に対して暴露するような形で情報提供することは避けられるでしょう。

社内研修を行う

インサイダー取引関連のルールを周知徹底するには、社内研修の実施が欠かせません。研修内容は明快な方が良く、細かなルールを周知徹底されるよりも、一般の投資家にとってアンフェアになる取引はすべてアウトになるという形で研修を行った方が伝わりやすいと言えます。

 

例えば、近いうちに自分の会社が民事再生手続きに入り、公表すれば明らかに株価が落ちるであろうというケースがあったとします。その株を知り合いが持っており、今のうちに売った方がいいとアドバイスを送れば、その知り合いが罪に問われてしまうのです。ちょっとしたことで犯罪者を生み出しかねないからこそ気を付けなければならないという形で研修を行うと効果的です。

まとめ

インサイダー取引は犯罪なので、絶対に手を出してはいけません。一方で、口を滑らせて重要事実を口にしたことで、相手を犯罪者にさせてしまう危険性もあります。重要事実を知った場合はたとえ家族であっても話さないことが大切です。

 

また自社株をできる限り持たないこともおすすめです。本当に重要事実を知らなかったとしても、悪い偶然が重なることも考えられるため、一切疑われないようにするためにも、全く関係がない会社の株を買うようにするのも1つの手です。

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