LENDEX業務部の石野です。
2023年3月に、シリコンバレー銀行など、アメリカで銀行の破綻が相次いで発生しました。
特に、シリコンバレー銀行の破綻規模は史上2番目となり、全米だけでなく日本でも大きな話題となりました。
そこで2008年のリーマンショックのような状況に陥らないのかを、心配している方もいるかも知れません。
今回は、アメリカの大手銀行が破綻した理由やその影響について解説します。
アメリカの大手銀行が破綻
2023年に入り、アメリカでシリコンバレー銀行、シグネチャー銀行、シルバーゲート銀行などの銀行が相次いで破綻しました。
シリコンバレー銀行は、シリコンバレーに拠点を置き、ベンチャーキャピタルなどに融資を行う老舗で、2022年末時点の総資産は2,090億ドルでした。また、シグネチャー銀行とシルバーゲート銀行は、暗号資産関連企業を中心に融資を行っていた銀行です。
シリコンバレー銀行の破綻は、アメリカの歴史において2番目に大きなものでした(1番目はワシントン・ミューチュアル)。
アメリカの大手銀行が破綻した主な理由
シリコンバレー銀行など、アメリカの大手銀行が破綻した主な理由について見ていきましょう。
FRBの金融政策の影響
FRB(連邦準備制度理事会)が大規模な金融緩和策を行い、また利上げを行ったことにより、スタートアップ企業の資金繰りが悪化し、多くの企業がシリコンバレー銀行から預金を解約・引き出しはじめました。
シリコンバレー銀行は、預金を国債などの債券で運用していましたが、政策金利の引き上げによって債券価格が下落しており、預金引き出しに対応するために価格が下落した債券を売る必要があったため、銀行の経営が悪化しました(18億ドルの損失が確定したと発表)。
その後、シリコンバレー銀行は公募増資(普通株と優先株)を行うと発表しましたが、同時期にベンチャーファンドが企業に預金解約を勧めていたこともあり、失敗し、解約件数も増えたと報じられています。
株価は大幅に下落し、SNS上でもシリコンバレー銀行の経営破綻を心配する投稿が広がり、多数の顧客が預金を引き出すために殺到し、最終的に銀行破綻に至りました。
アメリカの銀行に対する不安の連鎖
シリコンバレー銀行の経営破綻を受け、アメリカの銀行に対する信用不安が急速に広がりました。
また、暗号資産交換業大手FTXトレーディングの経営破綻によって暗号資産業界にも不安が広がっており、シグネチャー銀行とシルバーゲート銀行が暗号資産関連企業を中心に融資を行っていたため、取り付け騒ぎのような事態になって企業や個人による預金解約が加速し、破綻に至っています。
アメリカの大手銀行が破綻による影響について考える
シリコンバレー銀行などの破綻を受けて、FRBは利上げのペースを緩めるとの見方があります。
しかし、FRBはインフレを抑制するために利上げを進めており、ペースを緩めすぎてしまうと、インフレの収束を困難にし、アメリカ経済に大きなダメージを与える可能性があります。
日本への影響は限定的
シリコンバレー銀行は、スタートアップ企業に対する融資が中心で、大部分は法人からの預金であり、多くのスタートアップ企業が業績不安から預金を引き出したことで、今回のような事態が発生しました。
シグネチャー銀行とシルバーゲート銀行に関しては、暗号資産関連企業が融資の中心となっています。
これらの銀行は融資先が特定の業界に偏っているため、日本の銀行と比較してそのまま当てはめるのは難しいとされています。
また、アメリカの大手銀行が破綻した原因は、急激な金利上昇が一因でした。しかし、現時点では日銀が急激な利上げに踏み切る可能性は低いため、日本への波及リスクは限定的であると見られます。
まとめ
アメリカの大手銀行破綻が相次いだ背景には、利上げによるスタートアップへの融資が滞り預金の引き出しが多くなったという問題があります。一方で大手法人や日本国内への影響は限定的と見られており、為替や株価にも影響は出ていません。
経済は一つの事象が連鎖的な影響を発生させることも多くあります。
日本国内以外にも海外にも目を向け、常にニュースを確認しておくと良いでしょう。