マネーストックとは?簡単にわかりやすく解説|ハイパワードマネーやマネタリーベースとの関係性や違いとは

 

 

皆さんはマネーストックをご存じですか?マネーストックは経済の状態を知る上で欠かせない指標となります。マネーストックの状況を知ることで、日本を始め、世界的な経済情勢を推し量ることが可能です。

 

今回はマネーストックにスポットを当て、マネーストックとは何か、マネーストックの構成要素などをご紹介していきます。

目次

マネーストックとは?

マネーストックとは、特定の時点において、経済活動の中に存在している通貨もしくは通貨に変えられる資産全体を指します。

 

マネーストックに該当するものとしてまずは現金や銀行などの預金、銀行にある残高、そして政府などが保有する通貨など、通貨に関するものはすべてマネーストックとなります。

マネーストックの構成要素

マネーストックはいくつかのカテゴリーに分けられます。ここではマネーストックの構成要素についてご紹介します。

M1 (狭義のマネーストック)

M1は現金や預金が該当します。一般的な買い物などで用いられる現金などが対象となっており、紙幣や硬貨、当座預金や普通預金、当座預金などが該当します。

 

M1は狭義のマネーストックで、通貨発行主体として日銀や国内の銀行、信用金庫、ゆうちょ銀行などが含まれます。ゆうちょ銀行が国内の銀行と分けられているのはゆうちょ銀行は元々郵便局の組織の中にあったためで、ここ15年でマネーストックの考え方が変わったためです。

M2 (広義のマネーストック)

M2は定期預金や外貨預金などが含まれます。M1と重なっている部分も多く、普通預金もM2に含まれます。預金全般がM2に入っていると考えていいでしょう。

 

M1との違いは通貨発行主体の違いであり、日銀とゆうちょ銀行を除く国内銀行、信用金庫や農林中央金庫などに限られます。そのため、ゆうちょ銀行や農協や漁協、信用組合はM2には入りません。

M3 (最広範のマネーストック)

M3はM1とM2に加えて、ゆうちょ銀行などの定期預金や外貨預金を含めたものになっており、マネーストックの範囲としてはかなり広くなっています。そのため、流動性が低い資産なども含まれており、額面としては最も多くなります。

マネーストックはなぜ重要なのか

マネーストックはなぜ重要な存在となるのか、その理由についてご紹介していきます。

経済が健全な状態かをチェックできる

マネーストックは経済が健全な状態で動いているかをチェックする指標として活用できます。例えば、経済成長が著しい場合、マネーストックも大きな伸びを見せます。

 

一方、マネーストックが減る状況は経済の状態もあまりいい状態とは言えません。単純にマネーストックが増えたか減ったかで経済の状況を推し量ることが可能なのです。

インフレのチェックができる

マネーストックが増えると通貨の供給が増えていることを意味し、結果的に物価の上昇につながりやすくなります。そのため、マネーストックが増えることはインフレの可能性を示唆できるというわけです。

 

このため、日銀などの中央銀行はマネーストックの状況をチェックすることでインフレ対策を行うことができます。

金融が安定しているかを監視できる

マネーストックの動きをチェックすることで金融の状況が安定しているかどうかを確かめられます。仮にマネーストックが急激な動きを見せると、金融不安につながる場合があります。

 

金融市場の安定を監視するためにもマネーストックの存在は欠かせません。ゆえにマネーストックは重要な意味を持ちます。

理想的なマネーストックとは

では、マネーストックがどのような状態であることが理想的なのか、理想的なマネーストックについてご紹介します。

急な増減がなく安定した状態

マネーストックが急に増えたり減ったりする状態は金融不安につながりやすいなど、何かしらの状況が想定されます。そのため、急な増減がなく安定していた方が金融不安を起こさない、過度なインフレを引き起こさないことなどを考えても妥当な状態です。

 

マネーストックが安定しているとその分、通貨の価値も安定し、インフレもしくはデフレ回避にもつながります。

十分な供給で経済成長につなげられる

マネーストックは経済活動の中にどれだけ通貨が供給されているかを意味しており、潤沢にある状況であれば供給が行き届いており、資金調達もしやすくなります。

 

経済活動と資金調達は連携した関係となりやすく、供給が潤沢に行われれば経済成長にもつながりやすくなるのです。

信用創造の適正なバランス

理想的なマネーストックで重要なのは金融機関の信用創造がバランスよく行われていることです。信用創造とは銀行が貸し出しを幾度と繰り返すことで当初引き受けを行った預金に比べ、何倍もの預金通貨を生み出します。

 

信用創造自体は悪いことではなく、適切な範囲であればむしろ経済の活発さを促進しますが、過度にやれば金融不安につながりやすいため、注意が必要です。

日本におけるマネーストックの状況について

さて、日本におけるマネーストックはどのような状況なのか、気になる人も多いのではないでしょうか。

 

2023年10月のマネーストックは、M3はおよそ1600兆円となっており、前年と比べて2%ほど増えています。前の月との比較では多少減っているものの、前年と比べても伸びている状態です。

 

1600兆円の内訳は、預金通貨がおよそ960兆円、現金通貨が110兆円と預金だけで1000兆円あることがわかります。ちなみにM2は1200兆円ほどとこちらも前年と比べ2%ほど増えています。

世界のマネーストックの状況について

一方、世界のマネーストックについてですが、コロナ禍でのマネーストックの動きが強いインフレを呼び起こしたと言われています。この時期、経済が明らかに悪化したため、過度な利下げを実施し、量的緩和も行いました。その結果、マネーサプライは急増しています。

 

マネーサプライが急増すればインフレを誘発するのは当然で、その後インフレ率は10%以上を示し、物価高につながっていきます。日本から海外に行くと物価が高くて驚愕する日本人旅行客がいますが、それは円安とインフレが重なったためです。その分、賃金も増えているため、賃金がさほど増えていない日本と比べても受け止め方は異なります。

 

一方、マネーサプライは減少気味のため、景気減速が起きるのではないかという声も聞かれます。ここ10年で見てもマネーサプライの変化率は最も低くなるなど、景気が落ち込む可能性を示唆します。

 

金融政策によって抑制した政策になったことで、マネーサプライの伸びを止めたという向きもあり、激しいインフレを引き起こしてからの調整に手間取っていると言えなくもありません。

 

日本ではマイナス金利のままで推移していますが、多くの国では金利をどんどん上げています。それもそのはずで、世界のインフレの状況は1980年代初頭以来の高水準となっているためです。この状況を何とかするには金利を上げなければなりません。しかし、過度に金利を上げればマネーサプライに大きな影響を与えます。

 

新型コロナウイルスの影響で大幅なテコ入れをせざるをなかった事情はあったにせよ、過度に、かつ派手にやり過ぎた代償はまだあると言えるでしょう。

マネーストックとハイパワードマネーやマネタリーベースとの関係性について

マネーストックとは別にハイパワードマネー、マネタリーベースなどの言葉もあります。これらの関係性についてご紹介します。

マネーストックとハイパワードマネーの関係性

そもそもハイパワードマネーとは、日銀などの中央銀行が発行する通貨の中で、銀行の手元に保有される預金を指します。中央銀行への預金、いわゆる日銀当座預金残高と現金の合計がハイパワードマネーとなります。

 

ハイパワードマネーは別名ベースマネーとも呼ばれ、中央銀行からハイパワードマネーを受け取って、それを基に融資を行っていきます。信用創造にも用いられるなど、銀行には欠かせないお金です。

 

マネーストックは銀行の預金も含まれるため、ハイパワードマネーとの関係性は強くあります。ハイパワードマネーを管理することによりマネーサプライをコントロールすることができるため、かなり密接な関係性と言えるでしょう。

マネーストックとマネタリーベースの関係性

一方、マネタリーベースは、日銀など中央銀行が発行した通貨、国内銀行が保有する日銀当座預金全体の総量を指します。要するに世の中にあるお金全体の量がマネタリーベースです。このマネタリーベースは日銀が金融政策を動かしていく中で基本となる指標であり、通貨を供給していく際の出発点です。

 

マネーストックは商業銀行など金融部門から経済に供給される通貨の総量を表しており、マネタリーベースから政府などが持つお金を差し引くことでマネーストックとなります。ただ、マネタリーベースを増やせばマネーストックが増える単純な関係性とは言えず、近年マネタリーベースは増えているものの、マネーストックはその割に緩やかにしか増えないという状況になっています。

 

日銀がマネタリーベースを増やしたところで、当座預金ばかりが増えて、社会に流れていかないことが近年問題になっており、改善が必要です。

まとめ

マネーストックは考え方としては難しいですが、1つ1つポイントを見ていくとそこまで難しくはなく、世界の状況をチェックしながら日本の状況を見ると、インフレの可能性などを推し量ることが可能です。

 

マネタリーベースやマネーストックなどニュースではあまり取り上げられていませんが、これらをチェックすることで最近の動向を確かめられるので経済誌などで確認しましょう。

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