皆さんはリセッションをご存じですか?リセッションは景気後退を意味する言葉であり、景気が悪くなっていく時に使われます。一方で、リセッションは特定の指標で判断できるため、おおよその傾向は誰でもつかめるのが特徴的です。
本記事ではリセッションとは何か、リセッションを中心とした話題を中心に解説を行っていきます。
リセッションとは?
リセッションは景気後退を意味しますが、どういう場面でリセッションという言葉を用いるのか、意味や定義をご紹介していきます。
リセッションの意味
リセッション(recession)には後退や撤退という意味がありますが、中でもよく用いられる意味に景気後退、不景気があります。また不況にも使われることがあり、いずれにしても景気が悪い時に使われやすい言葉であることは、英単語からも明らかです。
リセッションの定義
実はリセッションの定義は国によって異なります。基本的にはGDP(国内総生産)が2四半期連続マイナスであればリセッションであると判断されることが多いです。
一方、日本の場合はDI(景気動向指数)が50%を下回ればリセッションであると判断される傾向にあります。景気動向指数は30項目の景気指標によって算出されるもので、50%を下回る月が続けばリセッションの状態にあると言えます。
リセッションはなぜ起きるのか
リセッションは経済活動の積み重ねによって生じるものです。経済活動によって生じる波には主に4つの波が存在します。ここではその4つの波についてご紹介します。
キチンの波
キチンの波は景気の波の中でも比較的短い波でおよそ3年強のサイクルで展開されます。企業が抱える在庫の動きによる波で起こりやすく、そこまで大きなうねりにはなりにくいと言えます。
一方で、技術革新やグローバル化などの影響で以前ほどはっきりとした波の動きはしていないという見立てがあります。そのため、キチンの波を感じ取ることは現状だと難しいとされています。それもそのはず、キチンの波は1900年代前半に登場したものなので、当時と今では明らかに経済構造が異なるため、致し方ありません。
ジュグラーの波
ジュグラーの波はおよそ10年前後で生じる景気の波です。ジュグラーの波が起こる要因は設備投資によるもので、設備そのものの耐久年数がだいたい10年前後であることもポイントです。
キチンの波と比べるとジュグラーの波は現状でも影響を与える要素と言われ、技術革新の時代にあってもジュグラーの波は健在と言えます。
クズネッツの波
グスネッツの波はおよそ20年ほどのペースで波を上下させていくサイクルです。グズネッツの場合は建築物が大きな影響を与えます。建て替えや改修などがその要因です。
建築物に関しても技術革新があるとはいえ、現在も一定の動きが見せています。日本でも昭和後期の建物を取り壊して新しいものを建てる動きや、2000年前後に建てた物件の改修など、グズネッツの波に通じるような動きが見られます。
コンドラチェフの波
コンドラチェフの波は50年を目安に波が起きるサイクルです。コンドラチェフの波に関しては技術革新が大きな影響を与え、技術革新が進めば景気が一気に高まるとされています。
現状ではAIなどのデジタルテクノロジーがコンドラチェフの波を作り出すのではないかと言われており、近年ではあのイーロン・マスクもAIに力を入れ始めたという話もあります。この4つの波がタイミングよく重なることで大きな波となって好景気をもたらすことになるでしょう。
裏を返せば、4つの波の底の部分が重なってしまうと、とんでもない不況、リセッションを生み出すことにもつながるのです。
リセッションはいつ来るのか
リセッションはだいたいどれくらいのペースで来るものなのか、おおよその目安は知っておきたいところです。ここではリセッションの周期についてご紹介していきます。
日本ではおよそ40年間で7回のリセッション
日本におけるリセッションは1985年以降では7回あったとされています。1985年以降最初のリセッションはプラザ合意などで巻き起こった円高不況によるものです。その後バブル経済に突入し、日本は空前の株高となりましたが、その後一気に失速し、1年以上のリセッションに突入してしまいます。
その後はリーマンショックや新型コロナウイルスなど外的要因で下がるなど、7回のリセッションがありました。単純な計算をすると5年もしくは6年に1回リセッションが訪れるような計算です。前回はコロナ禍でリセッションが起きており、次にリセッションが起きるのは単純計算では2026年や2027年と考えられます。
ただ、リセッションの期間を差し引くとリセッションではない期間は5年以上あると考えられるため、5年前後と考えると、2024年の終わりや2025年にはリセッションの可能性があり得るでしょう。
リセッションが起こることで生じる株価への影響
リセッションが起こることで株価へはどんな影響が生じるのか、日本のケースを参考にご紹介していきます。
日本の株価とリセッション
先ほどもご紹介した通り、過去40年ほどで7回のリセッションがあった日本経済ですが、リセッションとの関連性は必ずしもあるとは言えません。例えば、1985年から始まったリセッションでは指標では低いところで安定しているものの、株価は右肩上がりでした。
もちろんバブル期のようにリセッションで指標の数値が落ち込むのと同じように株価が落ちるケースもあれば、リーマンショックの時のようにガクンと落ち込むこともあります。一方でコロナ禍でのリセッションでは意外にも株価は乱高下こそありましたが右肩下がりとは言えない状況でした。
リセッションが起きたからといって、必ずしも株価が一気に落ち込むことは考えにくいでしょう。日本では株価を高く安定させるため、あの手この手の策を講じていることもリセッションと株価が連動していない状況を生んでいると言えます。
リセッション時の投資は何をすればいいか
リセッションが起きている最中も、私たちは投資で資産運用などをしなければなりません。リセッションが懸念されている時期における投資として何をすればいいのかをご紹介していきます。
リセッション時に強い公益事業
リセッションではいかに底堅い事業を展開できているかが重要な意味を持ちます。その際に電気やガスなど公益事業がリセッション時に強く、アメリカでは公益事業への投資が目立ち始めます。日本でも公益事業を展開し、株式上場している企業が一定数存在します。
その象徴的存在なのが電力系の会社です。今の電力系会社は原子力発電でかなり影響を受けてきており、最近になってようやく原子力発電の本格再開の兆しが見えてきました。また値上げ申請など業績が上向きになろうとしており、この後にリセッションに突入しても一気にガタつく可能性は低いと言えます。
電気やガスなど景気が悪くなっても利用を控えることができない分野です。だからこそ、リセッションに突入しても底堅さがあるのです。
生活必需品系もリセッションに強い
リセッションに強いという点では生活必需品系も強いと言えます。不景気だからといって生活必需品を買い控えることは考えにくく、節約を心掛けても完全な買い控えは難しいでしょう。このため、生活必需品系に関してもリセッション時でも堅調な動きを見せやすいのです。
日本だと日用品や生活用品関連の銘柄がこれに該当し、何かしらの不祥事が起きて品質に懸念が生まれるようなことさえなければ、リセッションをきっかけに大きく底を割ることは考えにくく、業績もそこまでは落ち込まないでしょう。
裏を返せば、お金に余裕がある時に購入する贅沢品的なものはリセッションで大きな影響を受けます。そのあたりを考慮した投資が求められるでしょう。
リセッションの過去事例について
リセッションは世界各国で起こっていますが、ここでは様々な国のリセッションの事例についてご紹介します。
アメリカのリセッション
アメリカでは第二次世界大戦以降、13回のリセッションを経験し、最もリセッションが続いたのは2007年2月から2009年6月、リーマンショックなどが巻き起こった時期で1年半でした。2008年は丸々1年リセッションの状態にありました。
アメリカの場合は2度のオイルショックや新型コロナウイルスなど外因的な要因で落ち込むことが多く、経済失政によるリセッションはそこまで多くはありません。新型コロナウイルスが発生し始めた時期はアメリカの経済は一時的にダメージを受けましたが、すぐに改善を見せており、日本とは違う動きを見せています。
ドイツのリセッション
ヨーロッパの中で最近までリセッションが続いていたのがドイツです。ドイツでは2023年に入ってから国内総生産が減少に転じたことでリセッションとなりました。ヨーロッパ経済のエンジンとまで言われたドイツでしたが、エネルギー政策や中国依存などにより、ヨーロッパの主要国の中で唯一リセッション入りしたと報道されました。
なんとかリセッションを脱したものの、それでもいつ再びリセッションに突入してもおかしくはなく、こちらも外因的な要因が影響しやすい状況にあります。
まとめ
今回はリセッションを中心にご紹介してきました。
リセッションは指標の動きから比較的予想がしやすいとされています。リーマンショックなどもサブプライムローンの動きから怪しさを事前に感じ取っていた人もいるなど、注意深く観察し、手堅く立ち回ることで回避することはできます。
ただ、人間というのは欲深い生き物です。まだ大丈夫だろうと思っていると痛い目を見ます。リセッションに突入し、「もう少しすれば終わる」と思っているうちに底まで行ってしまうこともあるでしょう。そうならないよう、慎重かつ大胆な行動が問われます。